
ここまでの記事では、なぜ専門職はキャリアで迷いやすいのか、その背景にある現状維持バイアス、迷ったときに最初に考えるべき3つの問いについて整理してきました。
この記事では、それらを踏まえたうえで、では、私は実際にどう考え、どう動いたのかをまとめてみたいと思います。
あらかじめお伝えしておくと、ここに劇的な決断や、分かりやすい成功談は出てきません。
ただ、私自身、迷ったときに「やっておいて良かったこと」は、確かにありました。
私も、強い違和感から始まったわけではなかった
よく誤解されがちですが、私がキャリアを見直し始めたきっかけは、大きな不満、限界、トラブルではありませんでした。
むしろ、次のような「順調な状態」だったと思います。
- 仕事は忙しいが、回っている
- 評価もされている
- 役割も明確
だからこそ、「このままでいいのか?」という問いは、とても曖昧でした。
明確な理由がない。説明できる不満もない。それでも、どこかで引っかかっている。
今振り返ると、それはまさに現状維持バイアスの中にいた状態だったのだと思います。
まずやったのは「辞める/辞めない」を考えないこと
迷い始めたとき、私が最初に意識したのは、結論を出さないことでした。
「辞めるべきか」「続けるべきか」
この問いは強力ですが、早すぎます。答えを急ぐと、人はどちらかを正当化する材料だけを集め始めてしまいます。
そこで私は、意識的にこう考えるようにしました。
- 今日は結論を出さない
- 代わりに、状況を言葉にする
これは逃げではありません。順番の問題です。
記事①〜③の問いを、自分に向けて使ってみた
具体的にやったことは、特別なものではありません。

① 何を守るために現状を続けているのか
収入、立場、信用、これまで積み上げた専門性。どれも簡単には手放せない。
「辞めない理由」をちゃんと書き出してみると、自分が何を大切にしているのかが初めて見えてきました。
② 違和感は環境か、関わり方か
次に考えたのは、「本当に場所を変える必要があるのか?」という点です。
よく見ると、違和感の多くは環境そのものよりも、次のような点にありました。
- 役割の増え方
- 決定への関与の仕方
- 期待とのズレ
ここを切り分けられたことで、「転職しかない」という思考から一度距離を置くことができました。
③ なぜ今は辞めないのか
最後に、自分にこう問いかけました。
今の私は、なぜ辞めないのか?
これを言葉にできたとき、不思議と気持ちは落ち着きました。
「辞められない」のではなく、「今は辞めないと選んでいる」と感じられたからです。
この感覚は、想像以上に大きな違いでした。
ただ、同時に感じたのは、「これ以上は一人では整理しきれない部分もある」という感覚でした。
「辞める」という選択肢を、机の上に置いたままにする
重要なのは、辞めるかどうかを決めたことではありません。
辞めるという選択肢を、ちゃんと意識した状態で、今の環境にいるという点です。
以前の記事でも書きましたが、「辞めるという最強の武器は、サラリーマンだけのものでは無い」。
これは、すぐに退職するという意味ではありません。
- いつでも考え直せる
- 選択肢を封印していない
- 辞めない理由を自覚している

この状態を作ることが、専門職にとってはとても重要だと感じました。
私にとって一番の変化は「情報の見え方」だった
こうして考えを整理したあと、初めて気づいたことがあります。
それは、情報が、ノイズではなくなったということです。
整理されていない状態で見る情報は、不安を煽る、焦らせる、比較させるだけの存在でした。
一方で、自分の軸がある程度言葉になってからは、次のように冷静に仕分けできるようになりました。
- これは今の自分には不要
- これは参考になる
- これは将来の選択肢
ただ、その軸を作る過程では、外からの視点があった方が早かっただろうとも感じています。

整理の次に意識したこと
ここまで整理してきて、私自身が次に意識するようになったのは、
「どんな情報を、どの順番で、誰の視点を借りて集めるか」
という点でした。
まとめ:答えを出す前に、立ち止まる価値はある
専門職のキャリアは、簡単にやり直せるものではありません。
だからこそ、次の両方を避ける必要があります。
- 勢いで辞めない
- 思考停止で続けない
そのために必要なのは、勇気でも、覚悟でもなく、整理する時間だと、私は感じています。
シリーズを振り返って
このシリーズでお伝えしたかったのは、「転職すべき」でも「残るべき」でもありません。
納得して選べる状態を作ることの大切さです。
専門職として長く働くなら、自分のキャリアを自分の言葉で語れる状態でいたい。
そう思って、この4つの記事を書きました。
もしあなたが今、同じように迷っているなら、まずは立ち止まって、整理する時間を作ってみてください。
その時間は、決して無駄にはなりません。

コメント